UML参考書籍ガイド

UML/OOAD試験の参考文書のうち、特に推奨したいものの感想を書きました。UML学習の際の参考にしてください。
本当は開発プロセス(RUPやXP)だとかデザインパターンとかについても触れるべきなのですが、今回はまとめきれなかったので書いていません。機会が有ればそのうちまとめてみたいと思います。

「かんたんUML」(オージス総研 / 翔泳社)

とりあえずイラストが多くて文字の密度が低いので、非常に読みやすい本。「UMLで使う『図』って、だいたいこんな感じ」というイメージを掴むために最初に読むと良い。ただし、入門書ゆえの限界もある。たとえば、サンプルとして提示されているケースで開発方法論が全く見えないためUMLを使って表現したいものも伝わらない、また、UMLの表記法についても説明が不十分である、などである。この本だけではUMLを「使える」、つまりコミュニケーションの密度を高めるために利用するようにはならないだろう。

「UML モデリングのエッセンス 第2版」 (マーチン・ファウラー / 翔泳社)

どのUMLやオブジェクト指向開発の書籍でも参考文献として名前が上がる、定番中の定番の書籍。
UMLで利用する図の解説を、標準的な現代開発プロセス(RUPやXPの最大公約数)にしたがって行なっており、この本を完全に理解することが出来ればUML/OOADで困ることはまず無いだろう。本格的にUMLの学習を始める際に最初に手に取るべき本である。
但し、非常に内容が濃い本である。初めは書いてあることの意味が取れない部分も多いだろうし、学習を進めて読み返すごとに新たな発見がある。分からないところは飛ばしてでもとにかく一度読み切ってしまい、学習を進めていくのに合わせて関連する部分をチェックするという使い方がおそらく正しい。

「UMLユーザーガイド」(グラディ・ブーチ / ピアソン・エデュケーション)

UMLのリファレンス。UMLは人と人とのコミュニケーションに使うものなので、仕様書を全部読む必要はまずない。通常はマニュアルとしてもこの本のレベルで充分だろう。とはいえ、全部を読む必要はなく、後述の自習書を読む中で必要な部分を確認していくという使い方をすれば良いはず。

「独習UML」(ジョゼフ・シュムラー / 翔泳社)

RATIONALの講習で自習書として薦められた本。UML自体の解説と、UMLを用いたケーススタディがバランス良く含まれた本である。後述の「実践UML」より取り付きは良いと思うので先に持ってきた。「独習」の名の通り、これ一冊で何とかなるように作られているので、持ち歩いて電車で読むには一番だと思う。

「実践UML」(クレーグ・ラーマン / ピアソン・エデュケーション)

「独習UML」と同様の、オブジェクト指向分析/設計の自習書。ケーススタディ部分は「独習UML」の二倍ほどあり、前提としているスキルレベルも高い。その分丁寧な解説が詰まっており、オブジェクト指向分析/設計の中心概念である「レスポンシビリティ(クラスの責務)」に注目した説明がくどいぐらいになされているのが非常に有益である。これもいろいろな場所で推薦されている書籍。

「ユースケースの適用:実践ガイド」(ゲリ・シュナイダー / ピアソン・エデュケーション)

上の2冊はどちらかといえば分析/設計に重点を置いた本だが、こちらはユースケースを用いた要件定義(という言葉は本当は正しくないのだが)のケーススタディを扱った本。現代開発プロセスではユースケースが非常に重要な役割を果たしているが、UML要素の中で一番誤解されているのもおそらくユースケースである。機能分割で先にシステムのイメージを作ってしまい、それをユースケースに落としていくという使い方をしていては、オブジェクト指向開発のメリットを引き出すことはできない。本書ではユースケースを開発プロセスの中にどう位置づけるかが丁寧に解説されているため、ユースケースの本当の意味と威力が良く分かると思う。

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Last modified: Wed May 05 10:04:55 +0900 2021